第10期計画(2027〜2029年度)の策定作業が進むなか、総合事業をどう書くかで手が止まっている自治体は多いのではないでしょうか。総合事業は令和6年3月に指針が全部改正されたばかりですが、さらに対象者の拡大などを含めた見直しについて「第10期計画期間の開始までに結論を得る」とされ、そのための検討会が動いています。そこで中心的な論点のひとつになっているのが、短期集中予防サービスとその考え方であるリエイブルメントです。

リエイブルメントとは何か

リエイブルメント(reablement)は、病気やけが、入院などによって一時的に生活機能が落ちた方に対し、短期間・集中的に関わって、元の生活を取り戻してもらうという考え方です。もともとは北欧や英国で発展した実践で、英国NICEのガイドラインでは「短期的かつ集中的であり、通常は最大6週間提供される」と整理されています。専門職が本人の目標に沿って関わりながら、支援を段階的に引いていく点に特徴があります。

大切なのは「してあげる支援」ではないという点です。掃除を代わりにやってあげるのではなく、掃除ができるようになるまで一緒に取り組む。ゴールはサービスの継続利用ではなく、サービスからの卒業にあります。

日本の総合事業でこの考え方に近いのが、いわゆるC型(短期集中予防サービス)です。ただし期間の設計は海外とは異なり、国のガイドライン上は3〜6か月程度を想定した運用が一般的で、実際に「3か月・週1回・全12回」といった形で組み立てている市町村もあります。あらかじめ終わりが決まっている——サービスが終了することを前提に設計されている点が、従前相当サービスとの決定的な違いです。

すでに令和6年、指針は改正されている

ここで押さえておきたいのは、総合事業の指針は令和6年3月に全部改正されているという点です。検討会の議論はその先の話であって、足元の運用ルールはすでに動いています。

この改正では、継続利用要介護者が利用できるサービスの弾力化、補助・助成による実施の場合の対象経費の計算方法の見直しなどが盛り込まれました。そしてリエイブルメントとの関係でいちばん重要なのが、「目標指向型の介護予防ケアマネジメント」が明確化されたことです。

高齢者本人がどうなりたいかという目標を起点に、その達成に向けて支援を組み立てる——短期集中予防サービスは、この目標指向型のケアマネジメントとセットで初めて機能します。「C型という事業を用意する」だけでは足りず、入口のケアマネジメントが目標指向型になっているかが問われる、という構造です。第10期の計画づくりでは、この令和6年改正をどう実装したかを踏まえたうえで、次を書くことになります。

なぜいま、第10期で問われるのか

背景には、総合事業が思うように機能していないという課題認識があります。多くの市町村で、総合事業は従前相当サービスが中心となり、C型が実施されていない、あるいは実施していても対象者がごく少数にとどまるという状況が続いてきました。「受け皿がないから従前相当を出し続ける」という構図です。

一方で、リエイブルメントを取り入れた短期集中予防サービスの支援を行った自治体では、元の生活を取り戻した要支援者が現れるといった成果が報告されており、普及が図られています。つまり「やれば効果は出る。ただ、やる体制が整っていない」——ここが第10期に向けた問いの核心です。

加えて、第10期は人口減少と担い手不足を正面から見据える計画期になります。支える人が減っていくなかで、要支援の段階から生活機能の回復を図る取り組みは、給付の抑制という文脈だけでなく、限られた人材をどこに配置するかという意味でも重みを増します。

計画に書くとき、押さえておきたい3つの論点

第一に、担い手をどう確保するかです。リエイブルメントにはリハビリテーション専門職の関与が欠かせませんが、地域に理学療法士・作業療法士が潤沢にいる自治体ばかりではありません。医療機関や介護老人保健施設との連携、リハ職団体との協議、あるいは近隣自治体との広域的な取り組み——「誰が担うのか」を具体的に書けるかどうかで、計画の実現性が変わります。

第二に、出口の設計です。3か月なり6か月なりで終了したあと、その方はどこへ行くのか。通いの場、住民主体の活動、あるいは一般的な地域資源。ここが用意されていないと、卒業したはずの方が数か月後に戻ってきます。短期集中の効果は、実はその後の受け皿の充実度に左右される——この点を計画の中で結びつけて書けている自治体は、まだ多くありません。

第三に、評価の物差しです。実施回数や参加人数だけを指標にすると、「たくさんやったが誰も卒業していない」状態を見逃します。終了時に生活機能がどう変わったか、その後どのくらい維持されたかまで追う設計にしておきたいところです。以前の記事で書いたロジックモデルの考え方が、まさにここで効いてきます。

「まだ結論が出ていない」ことをどう扱うか

検討会の結論が第10期の開始までに示されるということは、計画策定の作業と制度見直しの議論が並走するということでもあります。策定担当者としては悩ましい状況です。

ひとつの考え方として、計画本体には方向性と体制づくりを書き、詳細な事業設計は弾力的に対応できる書きぶりにしておくという進め方があります。「国の議論の動向を踏まえ、必要に応じて見直す」といった一文を添えておけば、結論が出たあとに慌てて計画を修正する必要も減ります。前回の記事で触れた進捗管理の考え方と同じで、確定していないものを無理に書き切らないことも判断のうちです。

おわりに

リエイブルメントは、言葉としては新しく聞こえますが、根っこにあるのは「その人が自分の暮らしを続けられるように支える」という、介護保険が最初から掲げてきた理念そのものです。第10期でこれをどう書くかは、制度対応というより、自分たちの地域で自立支援をどう捉えるかという宣言に近いのかもしれません。

国の結論を待つ部分はあります。それでも、地域にどんな専門職がいるか、卒業後の受け皿に何があるか——この棚卸しは、いまから始められます。策定作業の合間に、ぜひ手をつけてみてください。地域を支える計画づくりに取り組む皆さまを、応援しています。

本稿の内容は執筆時点(2026年8月1日)の公開情報に基づきます。総合事業の指針は令和6年3月29日付の老健局通知で全部改正されています。制度の詳細および見直しの結論は、厚生労働省および検討会の公表資料をご確認ください。

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