「計画は立派だが、3年後に振り返ると何が変わったのか分からない」——介護保険事業計画に限らず、行政計画につきまとう悩みです。点検・評価が形式的になるのも、多くの場合、もとの計画が「評価できる構造」で書かれていないことに原因があります。その処方箋としていま注目されているのが、ロジックモデルです。

ロジックモデルとは——「風が吹けば桶屋が儲かる」を逆から書く

ロジックモデルとは、施策が成果に至るまでの道筋を一本の線で描いたものです。順番としては、まず目指す姿(最終アウトカム)を置き、それが実現するために必要な変化(中間アウトカム)を考え、その変化を生むための取組の産出量(アウトプット)具体的な活動へ、逆算で下りていきます。

たとえば介護予防の分野なら、こんな一本線が描けます。「高齢者が地域とつながり続けている」(目指す姿)←「通いの場への参加率が上がる」(中間アウトカム)←「通いの場の数と担い手が増える」(アウトプット)←「立ち上げ支援、担い手養成講座、送迎の工夫」(活動)。こう書いておけば、3年後に「参加率は動いたか」「場は増えたか」を測るだけで、施策のどこが効いてどこが詰まったのかが分かります

国が示している介護予防等の「取組と目標」設定の考え方も、発想は同じです。目標を活動量だけでなく成果で立て、測れるかたちにしておく——ロジックモデルはそのための道具です。

作り方のコツは、「欲張らない」

ロジックモデルづくりで最初につまずくのは、計画の全施策をモデル化しようとして力尽きるパターンです。おすすめは重点テーマを3つ程度に絞ること。介護予防、認知症、在宅生活の継続——このあたりから、自分のまちの課題(調査の読み解きで見つけた「気になる数字」)に合うものを選びます。

作る順番にもコツがあります。ゼロから理想形を描くのではなく、いまある施策を先に並べ、逆算のモデルに当てはめてみるのです。すると「活動はたくさんあるのに、中間アウトカムにつながる線がない」「この成果を目指すはずの施策が、実はひとつもない」といった穴が見える。この穴こそが、第10期で新たに手当てすべき部分です。

指標は「取れるデータ」で立てることも忘れずに。理想的な指標でも、測る手段がなければ3年後にまた「測れない」に分類されるだけです。既存の統計、給付データ、交付金の評価指標、次回のニーズ調査で取れる項目——測定手段とセットで指標を決めるのが鉄則です。

計画書のどこに書くか

ロジックモデルは、必ずしも図として計画書に載せる必要はありません。重点施策の章立てを「目指す姿→現状と課題→施策→指標」の順で書くだけでも、実質的にロジックモデルの構造になります。図を載せる場合も、委員会や住民への説明資料として使えるシンプルさを優先してください。矢印が20本あるモデルは、作った本人にしか読めません。

そして、モデルは点検・評価とセットで初めて機能します。毎年度の進行管理で中間アウトカムの指標を確認し、動いていなければ活動を見直す。この運用まで含めて設計しておけば、「作って終わり」の計画からは確実に卒業できます。

おわりに

ロジックモデルというと難しそうに聞こえますが、要するに「この施策は、何のためにやるのか」を線でつなぐ作業です。むしろ現場の担当者こそ、日々の業務の中で「これは何のためだっけ」と感じている当事者のはず。その違和感を言葉と線にしたものがロジックモデルだと考えれば、身近に感じられるのではないでしょうか。

重点テーマひとつ、紙1枚から始めてみてください。第10期計画が「使える計画」になる、確かな一歩です。素案づくりに向かうみなさんを応援しています。モデルづくりのワークショップや素案への落とし込みは、お問い合わせフォームからご相談ください。

本稿の内容は執筆時点の公開情報と一般的な実務経験に基づきます。国の手引き類とあわせてご活用ください。

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