第10期計画づくりの序盤で必ず通るのが、第9期計画の点検・評価です。標準的には春の工程ですが、策定委員会の初回に間に合わせるかたちで、いまも作業中という自治体は少なくないはずです。
そしてこの点検・評価、正直に言えば「儀式」になりがちな工程でもあります。目標と実績の表を作り、「概ね順調」と添えて委員会に出す。委員からの質問は特になし。——身に覚えのある方も多いのではないでしょうか。この記事では、点検・評価を第10期の質につながる「実のある作業」に変える進め方を考えます。
なぜ形式的になってしまうのか
原因はだいたい3つに集約されます。第一に、そもそも第9期の目標が評価しにくい書き方になっていること。「充実を図ります」「推進します」という表現には、達成も未達もありません。第二に、実績を測るデータが取れていないこと。指標はあるのに、測る仕組みを作っていなかったパターンです。第三に、未達と書きにくい空気。議会や委員会に出す資料で「できませんでした」とは書きづらい——この心理が「概ね順調」を量産します。
大事なのは、これらは担当者の怠慢ではなく、構造的な問題だということです。だからこそ、進め方を少し変えるだけで結果が大きく変わります。
3色に塗り分けることから始める
おすすめしたいのは、第9期計画の施策・目標を一覧にして、「達成」「未達」「測れない」の3色に塗り分けることです。ポイントは3色目の存在です。「測れない」を正直に区分することで、評価の解像度が一気に上がります。
そのうえで、色ごとに問いを変えます。達成した項目には「なぜうまくいったのか。第10期でも続けるべきか、役割を終えたのか」。未達の項目には「目標が高すぎたのか、施策が動かなかったのか、環境が変わったのか」。測れなかった項目には「第10期では何のデータをどう取れば測れるようになるか」。この3つ目の問いが、そのまま第10期の指標設計の教訓になります。
未達こそ、委員会に出す価値がある
勇気がいることですが、未達の項目を理由の分析つきで委員会に出すことをおすすめします。経験上、委員会の議論がいちばん活性化するのはこの瞬間です。「概ね順調」の資料に意見は出ませんが、「ここが未達でした。理由はこう考えています」という資料には、現場委員の実感や専門委員の知見が集まってきます。それは第10期の施策を磨く、無料のコンサルティングのようなものです。
また、前稿で扱った保険者機能強化推進交付金の得点表と点検・評価を突き合わせると、自己評価と国の評価軸のずれも見えてきます。内部の振り返りと外部の物差し、両方使うことで評価の客観性が増します。
第10期への橋渡し
点検・評価の最終成果物は、評価シートそのものではありません。「第10期で取り組むべき課題の一覧」です。未達の理由分析からは重点施策の候補が、「測れない」の区分からは指標設計の改善点が、達成項目の振り返りからは やめてよい施策が出てきます。ここまで整理できていれば、秋以降の素案づくりで悩む時間が大幅に減ります。
おわりに
点検・評価は、過去の採点ではなく、次の3年への仕込みです。「概ね順調」と書けば今日は楽ですが、3年後にまた同じ振り返りを繰り返すことになります。正直な評価は、書く瞬間はすこし苦しくても、次の計画を確実に良くします。
日々の業務のかたわらで振り返りに向き合うみなさんを応援しています。評価の進め方や委員会資料のまとめ方など、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
本稿の内容は執筆時点の公開情報と一般的な実務経験に基づきます。各自治体の要綱・議会日程に応じて読み替えてください。
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