健康経営優良法人2027の申請書には、答えても答えなくても合否に影響しない設問がいくつか入っている——複数の実務解説がそう伝えています。申請の締切に追われている担当者からすれば「点数にならないなら後回し」で当然です。ただ、この種の設問には別の役割があります。国が次に何を見ようとしているかが、そこに先に現れるということです。この記事では、中小規模法人部門の申請書に加わったとされる「配点なしの設問」を手がかりに、今年ではなく来年以降を楽にするための読み方を整理します。

まず押さえる、健康経営優良法人2027の申請スケジュール

本題に入る前に、日付だけ確認しておきます。ACTION!健康経営ポータルサイトの案内によれば、中小規模法人部門の申請期間は2026年8月17日(月)から10月16日(金)17時までです。申請料は1件あたり15,000円(税込16,500円)と案内されています。

それから、意外と足元をすくわれるのが前提条件です。中小規模法人部門に申請するには、事前に「健康宣言事業」へ参加していることが必要とされています。協会けんぽや健康保険組合に加入している場合は、その保険者が実施している事業に参加する形になります。ここが未了だと、申請書の中身がどれだけ整っていても土俵に上がれません。まだの場合は、今年を準備の年と割り切る判断も十分に合理的です。締切の詳細や申請用IDについては、受付開始時の記事で触れています。

「配点なし」の設問が申請書に入ったと解説されている

今年の申請書の改定方針は、回答する側の負担を軽くすることだと説明されてきました。実際、中小規模法人部門については、合否を決める骨格——必須項目と選択項目の適合数という構造——に大きな変更はないと解説されています。その一方で、評価には使われない「アンケート」の位置づけで、新しい設問が加わったと複数の実務解説が伝えています。

そのひとつが、PHRを活用できる環境が社内にどれくらい整っているかを尋ねる設問です。もうひとつは、テーマ別のベストプラクティス(好事例)選定にエントリーするかどうかを尋ねる設問で、テーマとしては女性の健康、仕事と介護・治療・子育ての両立などが挙げられていると解説されています。いずれも配点はなく、回答しなくても認定の可否には影響しないという扱いです。

ここは正直に書いておきます。これらの設問の正確な文言や番号については、私たちは経済産業省の公表資料の原文を確認できていません。上に書いたのは、検討会資料をもとにした民間の解説が複数一致している内容です。実際に申請書に向き合うときは、必ず事務局が配布する最新の様式そのものをご覧ください。

PHRとは何か——健康データが「本人の手元」に集まる仕組み

PHRは Personal Health Record の略で、日本語では個人健康記録などと訳されます。健康診断の結果、処方された薬の記録、予防接種の履歴、それに歩数や睡眠時間といった日々の記録までを、本人が自分のものとして持ち運べるようにする——おおむねそういう考え方です。

ここで大事なのは、主語が「会社」ではなく「本人」だという点です。会社が従業員の健康データを集めて管理する、という話ではありません。むしろ逆で、転職しても、健康保険が変わっても、加齢で病院が変わっても、自分の健康の履歴が自分について回る状態をつくろうという流れです。マイナポータルで健診結果や薬剤情報を本人が確認できるようになってきたのも、この流れの一部です。

では、会社に問われている「環境の整備」とは何か。これも大がかりな話ではなさそうです。たとえば健診結果を紙で本人に渡して終わりにせず、本人が後からデータとして見返せる形で受け取れるようにしておく。あるいは、従業員が自分の健康データを見る・活用することを、会社として妨げず、むしろ促す。この程度の姿勢の問題から始まる領域だと考えておくと、身構えすぎずに済みます。

そして、配点がないということは、裏返せばいま国は「まず実態を知りたい」段階にあるということでもあります。実態が集まれば、次に来るのは評価項目への格上げです。今年のアンケートが数年後の要件になる可能性は、決して低くないと見ておいた方がよいでしょう。

長時間労働の設問は、来年から基準が上がる見込み

配点なしの設問と並んで、もうひとつ来年を左右しそうな変化があります。長時間労働に関する設問です。

解説によれば、この設問は名称が「長時間労働者への対応に関する取り組み」から「長時間労働の予防と事後対応」に改められ、①労働時間の適正化などの予防と、②長時間働いた人への事後対応という二本立てで確認する形になったとされています。そして重要なのはここからです。今年度はどちらか一方の実施で適合とされるものの、来年度からは双方の実施が求められる予定だと、事務局の資料に示されていると解説されています。大規模法人部門では今年度から双方が条件になっており、中小規模法人部門は1年遅れで同じ水準に移る、という段階的な進め方です。

これは中小企業にとって、実は親切な設計です。「来年からこうなります」と一年前に予告されているのですから、今年の申請で片方しかできていない会社は、この一年でもう片方を整えればいい。たとえば残業時間の把握と上限管理はできているが、月に一定時間を超えた人への面談や医師の意見聴取の運用が固まっていない——という状態なら、そこが来年までの宿題だとはっきりわかります。期限つきで、やることが具体的にわかっている宿題ほど、片づけやすいものはありません。

点数にならない設問の、実務的な使い道

「今年は間に合わせるだけで精一杯」という会社が大半だと思います。それでかまいません。そのうえで、申請の作業中にできる、ほとんど手間のかからないことを3つ挙げます。

ひとつ目は、配点のない設問にも、いまの実態のまま素直に答えてみることです。整っていないなら整っていない、で構いません。答えを考える過程そのものが「うちはこの領域を手つかずにしている」という棚卸しになります。書けないという事実がわかるだけで十分な収穫です。

ふたつ目は、その設問の内容を、来年の申請メモとして書き残しておくことです。申請が終わると、申請書の記憶は驚くほどきれいに消えます。半年後の自分に向けて「PHR」「長時間労働の予防と事後対応の両方」とだけ書いたメモを残しておけば、来年の出発点がまったく変わります。

みっつ目は、好事例のエントリーを、書けるテーマがひとつでもあるなら検討してみることです。女性の健康や、介護・治療との両立といったテーマは、大がかりな制度がなくても、日々の運用の工夫として実際にやっている会社が少なくありません。やっていることを言葉にする機会は、そう多くないものです。社内に向けても、採用の場面でも、その言葉は後から効いてきます。

おわりに

認定制度の設問は、毎年少しずつ形を変えます。追いかけるのは正直しんどいのですが、変化の向きには一貫したものがあります。会社が従業員を管理する方向ではなく、働く本人が自分の健康を扱えるようにする方向へ——PHRの設問も、長時間労働を予防と事後対応の両輪で見る変更も、その線の上に並んでいるように見えます。

点数のつかない設問は、いわば来年以降の予告編です。忙しい申請期間の最中に立ち止まる必要はありませんが、「そういう問いが来ていた」とだけ覚えておく。それだけで、次の一年の準備はずいぶん違ったものになります。まずは10月16日17時の締切を、無理のない形で乗り切ってください。これから健康経営そのものを始める方ははじめの一歩を、認定の区分を確かめたい方はブライト500・ネクストブライト1000の整理もあわせてどうぞ。

本稿の内容は執筆時点(2026年8月24日)の公開情報に基づきます。申請スケジュール・申請料・認定要件および申請書の設問内容は変更される場合があります。とくに設問の新設・変更に関する記述は民間の解説記事に基づくもので、原文を確認したものではありません。実際の申請にあたっては、経済産業省およびACTION!健康経営ポータルサイト、認定事務局が公表する最新の資料を必ずご確認ください。認定の取得を保証するものではありません。

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